都市ガスとLPガス
気が付いたらもう6月ですね。本店の千葉です。
皆さんのお住まいで使用してるガスは都市ガスでしょうか? それともLPガス(プロパンガス)でしょうか? 月々のガス料金の違い以外は特に関心がない人も多いと思います。今回は都市ガスとLPガスの違いを比べてみました。
原料
都市ガスはメタン(燃える気体)を主な成分に持つ天然ガスで、地中に張り巡らせたガス管を通じて気体のまま各家庭に供給されます。そのためガス管等のインフラ設備がない地域では都市ガスを使う事はできません。 約9割を海外から輸入する液化天然ガス(LNG)に依存しており、輸入先はマレーシア、オーストラリア、インドネシアが多く中東は10%以下と分散化が図られています。
一方、LPガスはプロパン、ブタンを主成分に持つ液化石油ガスで、約4分の3を海外から輸入しており、輸入先は中東が約9割を占めます。主成分がプロパンの場合はプロパンガス、ブタンの場合はブタンガスと呼ばれます。 比較的液化しやすいのでボンベに充填したものを業者が自宅まで配送する形で供給されます。そのため都市ガスのインフラが行き渡っていない郊外や地方都市等で広く家庭用の熱源として利用されます。
特徴・性質
都市ガスもLPガスも本来は無色・無臭ですが、ガスが漏れた際にすぐ気付くように匂いを付けてます。
都市ガスは-162℃まで冷やすと液体になり、体積が気体時の600分の1になるのが特徴です。海外から日本へガスを運ぶ際はこの性質を利用して、断熱材で覆われたタンクを搭載する特殊なタンカーで液体の状態で運ばれます。そして日本の受け入れ基地で再び気体に戻してガス導管で家庭へ送ります。
LPガスは-42℃で液体になり、体積は気体時の250分の1になります。容器内のLPガスは圧力をかけて液化されているので使用する際は常温で自然気化させるのが通常ですが、寒冷地等では強制気化装置(べーパライザー)が必要になる場合もあります。
安全面で気を付けなければならない性質の違いは、都市ガスは空気より軽く、LPガスは空気より重いという点です。 ガス漏れの時、空気より軽い都市ガスは換気扇等通常の換気経路を通じて排気されますが、空気より重いLPガスは室内に溜まりやすいため、漏洩時は底部の換気を行う必要があります。ガス漏れ検知器も都市ガスとLPガスでは設置する場所が異なります。
ガスの種類とガス機器
現在、都市ガスの種類は7グループ13種類に分けられています。そのためガスコンロ等のガス機器は供給されるガスに適したものを備え付ける必要があり、引越し等で供給されるガスの種類が変わった場合は買い替えや調整をしなければ安全に使用できません。
LPガスの成分は日本全国ほぼ同じなので器具は「LPガス用」と表示されているものならば全国どこでも使えます。
火力
都市ガスはガスのグループによって火力が違いますが大体1㎥あたり11,000kcalなのに対し、LPガスは1㎥あたり24,000kcalと約2.2倍の火力です。ただし、家庭での使用にあたってはコンロの供給圧が調整されているため、それほど大きな差は生じないでしょう。
料金制度
都市ガスは政府の認可を受けた公共料金で、事業者が勝手に料金を設定する事はできません。
一方、LPガスは事業者が自由に料金を定める事ができます。販売業態も元売り、卸、小売りと様々で、公正な適正価格やガイドラインはなく、販売店の裁量に任されています。そのため同じ販売店から買っている場合でも契約内容や時期で料金が違うという事もあります。
導入時の設備費用の料金に関しては、都市ガスの場合は利用開始時に一括で請求されるのに対し、LPガスは毎月の使用料金に上乗せされて分割で支払っていく場合が多いです。
安全性とメンテナンス、エコ性能
ガス漏れや地震の際にガスを自動で止めてくれるマイコンメーターは、都市ガス、LPガスともほぼ100%普及しています。LPガスで心配されがちなガスボンベが原因の事故はごく稀なため、安全性に関しては都市ガス、LPガスとも同等といえます。
また、現在のLPガスは販売会社が各家庭のガス残量をコンピュータ管理しているので利用者はボンベが空になる心配もしなくて大丈夫です。そのためメンテナンスの手間も都市ガスとLPガスはほぼ同等です。
ただ、高圧の液化ガスを気体に戻す圧力調整器や高圧ホース等がある分、LPガスの方が保守点検する場所は多いです。
エコ性能については二酸化炭素の排出量でみると都市ガスもLPガスも石炭やガソリン、灯油等と比べてかなり少ないためほぼ同等のクリーンエネルギーであるといえます。
災害復旧
地震や台風等の広域災害に対して、LPガスは都市ガスを圧倒する強さを見せます。
都市ガスは地中にガス管を埋めて使用しているため、災害時はもちろん災害後も完全に安全が確認できるまで使用できません。これに対し、LPガスは個別のボンベと配管、ガス器具の安全性が確認できればすぐに利用を再開できます。また、LPガス容器は通常家屋の横に2本設置されていて軒下に在庫がある状態になっています。そのため1本目が切れても2本目で約1ヶ月以上ガスを使う事ができます(50kg容器×2本の場合)。
東日本大震災の時、私は宮城県の実家で暮らしていましたが、津波も火事も来なかった家では「水道も電気も止まったけどLPガスだからガスコンロは普通に使えた」という話をよく耳にしました。
このように都市ガスとLPガスは料金だけでなく原料や供給方法、特徴も異なってます。もしガスの種類を選べるなら、自分にとって何がメリットでどれがデメリットになるか1度考えてみても良いかもしれませんね★