建ぺい率・容積率・高さ制限・斜線規定
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住宅やマンション、ビルなどの建築にあたっては、用途地域による種類の制限、建ぺい率や容積率による建物の大きさの制限などが規定されています。
しかし、これだけでは都市部の密集地における日照や採光、通風など基本的な住環境を阻害するおそれがあるほか、道路に沿って高い建物ばかりが並べば景観上の問題も生じるでしょう。
そのため建築基準法では、建物の高さを制限するためにいくつかの規定が設けられ、その組み合わせによって建築可能な範囲などが決められます。
建ぺい率
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合です。
建築面積のことを「建坪(たてつぼ)」ともいいますが、建物を真上から見たときの水平投影面積で表されます。
敷地面積と建ぺい率によって建築面積の上限が決まっており、用途地域との組み合わせによって30%から80%の間で定められます。
例えば、敷地面積100平方メートル、建ぺい率50%の場合の建築面積の上限は50平方メートルとなるのです。
敷地が角地に当たる場合や商業地域で防火地域に建つ耐火建築物等は、敷地に建てられる建ぺい率が緩和される場合もあります。
容積率
容積率とは、敷地面積に対する延床面積の割合です。
例えば、敷地100平方メートル、建ぺい率50%、容積率80%の土地の場合
延べ床面積の上限は80平方メートルとなり、1階を建築面積の制限いっぱいの50平方メートルとすると、2階床面積の上限は30平方メートルになります。
駐車場は延べ床面積の1/5まで、住宅の地階部分で天井が平均地盤面より1m以下にある部分は住宅部分の面積の1/3までは容積率の算定部分からは除かれます。
容積率の上限も同様に、用途地域との組み合わせによって50%から1300%の間で定められますが、前面の道路幅が12メートル未満の場合には、道路幅×0.4(住居系の用途地域)または道路幅×0.6(その他の用途地域)で求めた数値と、指定された容積率のうちどちらか小さいほうの数値が適用されます。
高さ制限の種類
建物の高さを制限する規定には次のようなものがあり、それぞれ用途地域との組み合わせによって適用される範囲が決められます。
ただし、日影規制は商業地域、工業地域、工業専用地域以外の用途地域において、地方公共団体の条例で指定された場合に適用されます。
また、高度地区は地方公共団体ごとに都市計画で定められるため、その内容は一律ではなく、この規定がないところも少なくありません。
■絶対高さの制限
■道路斜線制限
■隣地斜線制限
■北側斜線制限
■日影規制
■高度地区
また、2003年に施行された「天空率」の基準を満たす場合には、これらの斜線制限が適用されないことになっています。
絶対高さ制限
第1種低層住居専用地域と第2種低層住居専用地域では、建築物が10mまたは12mのうち都市計画で定められたほうの高さまでに制限されます。
特定行政庁の許可などによってこの制限が緩和される場合もありますが、一般的には3階建てまでの住宅などが中心で、この地域内に建てられるマンションも低層となります。
道路斜線制限
道路斜線制限は、前面道路の反対側の境界線から一定の勾配による斜線によって建物の高さを制限するもので、この斜線から突き出して建築をすることはできません。
この斜線の勾配は原則として住居系地域では1.25、商業系地域と工業系地域では1.5となっています。
また、前面道路の反対側の境界線からの適用距離が、容積率との組み合わせにより、住居系地域と工業系地域は20m~35m、商業系地域は20m~50mの範囲で定められ、これを超える部分については制限が及びません。
道路斜線制限では、建物の外壁を道路境界線から後退させた場合の緩和措置、敷地が2以上の道路に接する場合の緩和措置、その他敷地の条件による緩和措置などが設けられていて、実際に適用される斜線がかなり複雑になる場合もあります。
隣地斜線制限
隣地斜線制限は、第1種低層住居専用地域と第2種低層住居専用地域には適用されません。
これは低層住居専用地域に、隣地斜線制限よりも厳しい「絶対高さの制限」があるためです。
隣地境界線からの一定の立ち上がりと勾配の組み合わせによって建物の高さが制限され、住居系地域では立ち上がりが20m、勾配が1.25となっています。
その他の地域は立ち上がりが31m、勾配が2.5で、他の高さ制限に比べると緩やかな規制内容です。
隣地斜線制限の場合にも、建物を隣地境界線から後退させた場合の緩和措置、敷地と道路、その他の条件による緩和措置などが設けられています。
北側斜線制限
北側斜線制限は、第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域と第1種中高層住居専用地域・第2種中高層住居専用地域に適用されるものです。
北側の隣地における日照、採光、通風などを保護することが目的で、他の高さ制限に比べると厳しい内容になっています。
隣地斜線制限と同様に一定の立ち上がりと勾配の組み合わせによって制限されますが、立ち上がりの起点は真北方向の隣地境界線、もしくは北側に前面道路がある場合はその反対側の境界線となります。
立ち上がりは第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域が5m、第1種中高層住居専用地域・第2種中高層住居専用地域が10mとされ、勾配はいずれも1.25です。
ただし、下記の日影規制があるときは、第1種中高層住居専用地域・第2種中高層住居専用地域に北側斜線制限は適用されません。
なお、この制限における斜線は、真南方向へ延ばした線となるため、敷地境界線と直角になるわけではなく、敷地の条件によってはかなり複雑になります。
また、北側斜線についてもいくつかの緩和措置が設けられています。
日影規制
日影規制は、建物の形態や建築可能な範囲を直接制限するものではなく、建物で生じる影によってその可否を判断します。
敷地境界線から外側の一定のライン(5mを超え10m以内の範囲、および10mを超える範囲)において、それぞれ決められた時間以上の日影を生じてはならないとするものです。
日影規制では、日照時間が1年で最も短く、影が長くなる冬至日を基準として、午前8時から午後4時までの8時間(北海道は午前9時から午後3時までの6時間)における影を判定します。
また、隣地などの地盤面に生じる影ではなく、平均地盤面から一定の高さ(1.5m、4m、6.5mのいずれか…用途地域または指定による)の測定面が設定されます。
日影規制の対象となるのは、第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域、および用途地域の指定のない区域で条例で指定された区域の場合が、「軒の高さが7mを超える建築物または地階を除く階数が3以上の建築物」ですから、一般的な2階建ての一戸建て住宅は規制されません。
その他の区域の場合は、「高さが10mを超える建築物」が日影規制の対象となり、規制区域は地方公共団体の条例によって指定されますが、商業地域、工業地域、工業専用地域は除かれます。
ただし、商業地域など規制対象外の区域にある高さ10mを超える建築物が、他の規制区域内に影を生じるときには、その規制区域内の数値に基づいた規制を受けることになっています。
商業地域内にある建築物の間では、日影規制による日照の保護がないため、南側に建つ別のマンションやビルによって一日中まったく日照を受けられなくなったとしても、この規定のうえでは問題とされません。
天空率
家を建てる場合には、以上のように斜線制限、容積率など様々な制限を考えなければならなかったわけですが、2003年(平成15年)1月に施行された建築基準法の改正によって、新たに「天空率」という高さ制限の考え方が導入されました。
天空率とは、斜線ではなく、建物と空の比率で判断、ある位置から建物を見たときの全天に対する空の面積の比率を表しています。
それぞれ基準に定められた位置において、計画建物の天空率が、斜線制限に適合する建築物の天空率以上であれば、斜線制限に適合する建築物と同程度以上の採光、通風等が当該位置において確保されるものとして、斜線制限の適用を除外するというものです。
この「天空率」によって、これまで斜線制限で利用できなかった容積率を有効に使えるようになったり、2面道路に面していたりして建物の形が複雑にならざるを得ない敷地で、合理的な建築物を建てることができる場合があります。
建ぺい率と容積率さらに高さ制限は、家の環境や建物の大きさに関わる重要なポイントです。
土地を購入する際は、このポイントをしっかり確認して検討しましょう。